著者
James Maxwell Clifton Schor 長谷部 聡 :訳
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.59-66, 2009 (Released:2010-03-25)
被引用文献数
2

Phoria adptationについて書かれた文献をみると一般に、成長や疾病による眼球運動系の変化に対する代償システムとして位置づけられている。臨床家はしばしば複視や眼位異常を示す患者に遭遇するが、健常者のほとんどは、たとえ片眼を遮蔽しても眼位に狂いは見られない。正確な眼位がphoria adaptationのおかげである証拠は、長時間の片眼遮蔽実験から得られる。筆者らは、被験者(健常者)にversion、vergence、頭位の組み合わせに関連して各種の両眼視差を提示し、これに対するphoria adaptationを詳しく分析した。その結果、phoria adaptationの主な役割は、日常視において外眼筋の効果を分析し、管理することにあることがわかった。Heringの等神経支配の法則は、対象物の距離、方向、頭位に合わせて12本の外眼筋の張力のバランスを変化させるこの複雑なプロセスを、単純化した概念に過ぎない。また、眼球運動や頭部運動が、両眼の共同性を維持する上でさまざまな問題を招く事を指摘したい。眼位や頭位に関連する垂直または回旋方向のphoria adaptationに焦点をあてて、筆者らが実施した実験の概要を述べる。(訳者注:本稿におけるphoriaは、斜位heterophoriaではなく、片眼を遮蔽した時に見られる融像除去眼位fusion-free eye positionの意味。)